第一章 〜 偶然の必然で 〜
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「月ちゃん、おっはー」
「おはよう、あねちゃん」
家から歩いて一五分、走って一〇分くらいのところにここ府立南森坂高校(ふりつみなみもりさかこうこう)がある。この学校の通学路は地元でも評判の地獄の上り坂と言われている。このため生徒は遅刻で)らないように早めに学校に来ているのがほとんどである。遅刻した日にはこの上り坂を急いで上らなければと思うと体力がとてもじゃないがもたないからである。ある意味ダイエットにもなるかもしれないが、夏の暑さとこの上り坂の組み合わせを考えると非常に最悪なものであまり思い出したくもない。
ちなみに双子の姉である陽花はこことは逆方向の府立北森坂高校(ふりつきたもりさかこうこう)に通っていて、逆方向なだけあって向こうは下り坂でとても羨ましいものであった。
「おっ、珍しいな。大田(おおた)がこの時間に学校に着くなんてさ。」
「あっ、おはよう。永井(ながい)君」
「おっはー、永井。今日も相変わらずご熱心だねぇ。」
「うっ、うっせーな。横谷(よこたに)に言われたくねぇよ。」
今日もあねちゃんと永井君の痴話喧嘩が始まった。この光景を見ていると学校に来たんだなと改めて実感するのが私の日常となっている。なんでかはわからないけれど、二人のこの光景を見ていると世の中平和だなとも思ってしまうのだ。
この学校に入学して最初の宿泊研修で二人を見たときは見ず知らずの人とはどうも思えずについ声をかけてしまっていた。このとき二人はきっと私のことを少し不審がっていただろう。
キーンコーン カーンコーン
「席に着けー。今日は昨日言ったとおり転入生が来たぞ。」
皆が席に座り、先生が廊下に待たせている転入生に教室に入るように促した。
たしか昨日聞いた限りでは帰国子女(きこくしじょ)の男の子だそうで女子は特に気合が入っていた。オーラというか、とにかく化粧に力を入れていたりしていたのを見ている限りでは気合が入っているように見える。
そして転入生が教室に入ってきて、その顔を見た瞬間に私はいつの間にか立ち上がっていた。それに気づくと皆が私の方を見てどうしたのだろうかという目をしていた。私はそれが恥ずかしくなって大人しく席に座りなおした。
「転入生の柳田(やなぎだ) 光(こう)君だ。彼はこの間ヨーロッパから帰国してきて、何かとわからないこともあるだろうから教えてやるように。」
「ややこしい時期に転校してきましたが、よろしくお願いします。」
そして柳田君は空いている席に座った。ちょうどその席の隣には永井君がおり、早速握手(あくしゅ)をしていた。
それから授業が始まった。すると私は背中に何かが突き刺さっているような気がした。そっと後ろのほうを向くとその先に柳田君がいた。私がそちらを向いたからか柳田君は視線を黒板のほうに向けて一生懸命(いっしょうけんめい)ノートが書いていた。
そうこうしているうちに時間は過ぎていった。
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